市街地にほど近い平野部の佐賀市諸富町に野生のサルが4月から居着いている。山間部から離れているが、一帯は寝床になる空き家が点在し、軒先や畑には季節ごとの作物が実る。“快適”な環境に安心しているのか、サルは民家に入ったり、子どもに接近したりと行動をエスカレート。地域住民の不安は募る一方だが、市は「妙案はない」と対応に苦慮している。
8日午前7時半、諸富町寺井津の2階建て住宅。パートの弟子丸かおりさん(40)は屋根上のドスン、ドスンという音に驚いた。2階の窓を見ると、サルがべったりと張り付いていた。弟子丸さんの足元にいたネコをサルは威嚇したという。
市環境政策課によると、サルは1匹の雄で、諸富町為重や寺井津の両地区に集中して出没。4月の大型連休前から6月まで「軒先のビワを食べている」などの情報が相次いだ。夏になると、目撃情報は隣接する同市川副町早津江地区に移り諸富町を離れたかに思われたが、9月に入り再び報告が相次ぐようになった。
「人が育てたおいしい作物が魅力的で…」
元々、佐賀市の山間部の富士町周辺では珍しくなかったが、昨秋、平野部の久保泉町を皮切りに、蓮池町や北川副町とサルの目撃情報が次第に南下。諸富町の為重や寺井津に姿を現した4~6月は、あちこちの軒先にビワが実っていた時期だった。現在は畑の大豆が収穫期を迎えている。
日本モンキーセンター(愛知県)によると、ニホンザルは基本的に群れで行動するが、雄の中には群れを離れて単独行動する「離れ雄」がいるという。離れ雄が偶然、住宅街に来るのは珍しくはないものの、「人が育てたおいしい作物が魅力的で長くとどまっているかもしれない」と担当者。
人里に慣れたサルは次第に大胆になった。網戸を開けてネコの餌を荒らしたケースや、サルとネコが互いにガラス越しに威嚇し合ったとの目撃談も寄せられている。9月5日~今月7日に市が把握した14件はいずれもネコを飼育する家庭だった。
市は5月に箱状のわなを2カ所に設置したものの、一向にかからない。捕獲しようにも屋根の上を素早く逃げるため困難だ。地域では「行政の対応はにぶい」との不満もくすぶる。
同センターは「季節が変わり作物が取れなくなれば、移動する」とみる。ただ市環境政策課は「なんとか捕獲して不安を解消したい」として県と対応を協議しているという。(金子晋輔)
西日本新聞社
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